「働く場所に子どもたちを預けるところがあれば!」
そんな夢を叶えつつあるアメリカの試みをご紹介します。
●企業内保育所は全米どこにでも
 
ニュージャージ−州・ジョンソン&ジョンソンの本社で働くジョン・マッキーガンは毎朝8時半に息子(6才)と家をでる。子どもを本社内にある保育所に連れて行ったあと、同じ敷地内の自分のオフィスへ向かう。働く場所に保育所があるなんて、日本ではまだ夢の夢。でもアメリカの企業にはこのような” Family friendly program”があり、従業員の家族に重点をおいた会社からの支援が好評である。とくに母親に圧倒的人気なのが、このオンサイト(敷地内)の保育所・幼稚園と小学校である。
ジョンソン&ジョンソン 
ノースカロライナ州シャーロット市、宗教家ビリーグラハムゆかりの街。IBMなど優良企業が集まるオフィス街の一角にワコーヴィア銀行がある。
ここにはオンサイトで従業員の子ども500人を預かる”Child Development Center”があり、毎朝、父や母に連れられて生後6週間の乳幼児から6才までの幼稚園児がやってくる。保育所+幼稚園の役割をし、年齢に応じたプログラムを提供、例えば一年生になるまえに必要とされるフォニックス、コンピューターの基本操作、また各図工や絵画もカリキュラムに入っている。 午後2時という時間の見学のため、センターはとても静かで心地よく、乳幼児室では、授乳に訪れた数人の母親がいるだけで、多くの子どもたちがお昼寝をしていた。保育者と子どもの比率は0才から12ヶ月で1:4、1才から2才が1:5、2才から3才1:6、3才から4才が1:7、5才から6才が1:10という。また親とは週に2回のミーティングを持つという。
ワコーヴィア銀行 
 


ケンタッキーにあるトヨタ自動車工場、ここにも企業内保育所がある。4才になるスミ・マカディは毎朝トヨタの製造で働くお父さんのジムと朝5時半に家を出る。車の中も保育所についてからもスミはまだ寝たまま。目がさめてから保育所で、シリアルの朝ご飯を7時半に食べる。保育料は1週間につき85ドルの個人負担、あとの残りは会社から補助がある。
同じトヨタで働く母親のケイコ・マカディは8時半に会社へ。ケイコは勤務時間に娘に会いに行くことは特別な場合(お誕生日・発表会)以外はしないという。お昼を一緒に食べる親も多いなか、「どうして?」訊ねると、「スミが離れるのを嫌がって泣くのがつらいから」と笑っていた。スミは生後6ヶ月からずっとこの敷地内の保育所にいる。帰りはまたジムと5時半に帰路に着く。
トヨタ自動車 
ご参考までに、バリバリのキャリアウーマン、ポリ−・シャウス、ある証券会社副社長の若き日の子育て奮闘をご紹介したい。18年前、長男マシュウ−が生後2ヶ月になってすぐ職場へ復帰した。当時はオンサイトやニアサイト(会社に近い)のデイケアーなどなかったから、サンフランシスコの職場の近くにアパートを借り、子守りを頼んで歩いて15分のアパートへ授乳に通った。
自宅は車で50分の郊外にあるから、毎朝子ども連れでアパートへ、子どもをおいて、出勤、授乳に戻り、夕方にはまた息子をつれて自宅へ帰るという日課。出張時は一緒に連れて出かけて、ホテルの託児所に預けていたという。自分でニアサイトの保育所を実行していたところがすごい。当時もオンサイトデイケア−の構想はあったがコストが合わないので取りやめになったそうだ。彼女は今も半月は出張、男性と肩を並べてアメリカ中を飛び回っている。(取材・文/つちやみちこ)
★次回に続く★