10代の子を育てるのは大変。何が大変かというと、それぞれが抱える問題が複雑化し、「これ」という正解が見つかりにくいから。友人に相談しても、親に相談しても、心が晴れない…。そんなときが、ティーンエイジャーを育てている間に一度は訪れるものだと思います。
「赤ちゃんのころはよかったなあ。ミルクを与えてオムツを替えていればOKだったのに」
転勤で移ってきて8年。最近になってようやく、立ち話をして話せる人が数人できましたが、「悩み」などは、快適なご近所づきあいに配慮すると、やはり話題を選びます。
とりわけ最近は、親同士の価値観も、祖父母の世代の価値観もさまざま。悩みの解決は、相談相手との問題点の共有が第一歩ですが、実生活上で困ったことがあると、まず頼りにするのがインターネットの情報という人もいるかも。私がそうです。しかしそこでも、もっぱら、同じような悩みを抱えている人同士の意見交換を読んで、「ああ、みんな一緒だな」と思う程度。自分の悩みを他人の経験に映して一般化することで薄めるのが関の山。それでも、親世代に言わせると、「私たちのころよりはいいわよ」とのこと。そうですね、恵まれています、最近の親や子は…?
しかし、ニュースには毎日のように青少年問題が取り上げられています。


元大阪府警補導員の野沢征子さん(66)は、「青少年問題の解決は親に尽きる。親との会話の時間が子どもの大切な居場所になるのに、それすら怠る親は多い」と、話す(日本経済新聞/3月5日夕刊/@関西)。彼女は昨年7月、子育てを支援するNPO法人「キッズナビわかば」(大阪府枚方市)を設立。今年3月から、子育てに悩む親に子どもを預かりたい中高年女性を紹介するサービスを本格的に開始。
「まずは、親の息抜きのための時間をつくることからはじめたい」と同紙面で語っています。赤ちゃんを預かることで、子育てで余裕のないお母さんに時間をつくるというサービスのいわば青少年向け版。
ユニークなのが、親子の交流の少なさを問題視しながら、まずは親が子から離れて息抜きをする時間を与えるという解決策を示した点。
子育てに悩む親に対して、「まず、お母さんやお父さんが変わりなさい」というアドバイスは、時々目にします。そういうやりとりを見聞きするたびに私は、「家庭の悩みを思い切って他人に打ち明けるほど悩みぬいた親に対して“変わりなさい”と言っても、当事者にとって前向きな助言になるのだろうか?」と、思っていました。
それより、当然子どもの面倒を見るべき、保護し正しく育てるのが当たり前の「親」としての毎日の務めから、少し軽くする助けをするほうがいいのでは……でも、子どもを放置するわけにいかない、学校に行かせなければならない、交友関係に注意しなければならない。思春期の親だって大変なのです。
それならば、ちょっと大きい子でも預かりましょう。お母さんやお父さんに、リラックスする時間を持ってもらうことで、親子関係に前向きに取り組む心が戻ってくるのでは。
野沢さんのアイデアは、自らの37年間の補導員としての経験からでてきたものと言えるでしょう。
私もそうですが、80年代後半に「新人類」と言われ、常識にとらわれず「自分のやりたいこと」を探しをした世代。その世代も、親となり10代の子を持つようになると、次第に「親として」の常識の縛りにとらわれ、葛藤も生まれます。また、子どものほうも、携帯電話やネットゲームなどの新たなツールを使いこなすなど、消費を楽しみつつ、「勝つ」ことを強いられてもいます。
大人になりきれない親たちが、子どもを社会人として育てていかなければならない今、
「キッズナビわかば」のような子育て支援の今後に期待したいです。