お子様が赤ちゃんや幼児のころ、読み聞かせをした体験のある人は多いでしょう。絵本の手ざわり、におい。喜ぶ子どもの表情。知らず知らずのうちに、表情をつけてセリフを読んだり。楽しい時間ですね。
幼稚園や保育園に入ると、絵本の頒布会などがあります。わが子も、1ヵ月に2冊ずつ、偕成社の絵本を届けてもらってました。絵やストーリーが美しく、クリスマスの本などは、広げて玄関に飾ったり、子どもに読み聞かせながら、大人の私も楽しんでいました。
それから、近くの公共図書館にもよく通いました。子どもに半分選ばせて、残りは私が「これ、どう?」と選んだもの。子どもが好んで読むのは、自分が選んだものですが、いろんな本があるのだなということは、わかったと思います。
そんな本との向き合い方の時期を経て、やがて小学生になると、自分で好きな本を借りてきます。わが子は、なぜか「おばけもの」が好きで、『幽霊レストラン』のシリーズや、小泉八雲の『怪談』などを借りてきたり、あとは当時発売されて空前の人気となった、『ハリー・ポッター』や、ファンタジー物。伝記や科学物も読んでほしいなあと思うのですが、小学生に気乗りしない本を強制して読ませることは難しいもの。物語に偏った読み方が続きました。
しかし、本好きなのでとくに「本を読まない」と悩んだことはありません。私自身が活字中毒気味なので、リビングには常になんらか読みかけの本があり、休みの日のおでかけは図書館…、とりたてて教育熱心ではない親でしたが、本のある生活は当たり前。もうすぐ大学生になりますが、最近ようやく、共通の本を楽しみ、感想を述べ合うことができるようになりました。
さて、2002年に政府が「子ども読書活動推進基本計画」を策定しています。


この基本計画は、「すべての子どもがあらゆる機会とあらゆる場所において、自主的に読書活動を行うことができるよう、積極的にそのための環境整備を推進すること」が基本理念。「おおむね5年間にわたる施策の基本的方向と具体的な方策を明らかにするもの」とし、
次の4つの柱で記述されています。
(1)家庭、地域、学校を通じた、子どもが読書に親しむ機会の提供
(2)図書資料の整備などの諸条件の整備・充実
(3)学校、図書館などの関係機関、民間団体等が連携・協力した取組の推進
(4)社会的気運醸成のための普及・啓発
それから5年が経過したこの3月11日(火)に、第2次計画としてあらたに内容が改訂され、具体的な数値目標も盛り込まれました。
その背景には、国際学力テスト「PISA」で、日本の子どもたちの読解力の弱さが露呈したことがあります。その上で、子どもの読書推進の重要性を改めて強調、公立図書館のボランティアを現状の7万人から10万人に増やすことや、図書館のホームページの開設率を現行の56%から90%に高めることなどが提示されています。(3月11日/日経新聞夕刊)
このように、政府側からの働きかけに加え、今一度見直したいのは、家庭内での読書環境です。両親がテレビやゲームに夢中になって、マンガ以外の読書の習慣がない。図書館に行ったこともない。それはそれで、楽しい生活を送ることができるように現代社会はできていると思いますが、文字という人間だけが操ることのできるツールによって、自分の考えを伝え、相手と交流をすることができる、その土台を作るのは、やはり読書です。仕事でさまざまな子どもと接する機会がありますが、言葉の豊富な子はやはり、家庭で読書に対する習慣づけができています。言葉による表現力は、一朝一夕で身につくものではありません。読み、ひたすら読み、そして書き、話す。この積み重ねは、大人になってからは習得できないものです。小さいお子様をお持ちの親御さんには、人生の貴重な道具=言葉を磨くために、ぜひ、読書習慣について考えてほしいと思います。