先日、冬の時期に流行するとされていたノロウィルスが山梨県の保育園で集団発生中というニュース報道がありました。気候や食生活をめぐる環境の変化で、食中毒を起こす菌もボーダーフリーとなっているようです。
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を見ると、一年中、日本のあらゆるところで様々な菌が被害を引き起こしていることがよくわかります。

  発生場所 原因物質
1位 飲食店 1,980 ノロウイルス 3,508
2位 仕出屋 1,279 ウェルシュ菌 211
3位 旅館 595 カンピロバクター 174
4位 老人ホーム 51 その他の病原大腸菌 61
5位 家庭 22 ぶどう球菌 22
6位 寄宿舎 19 セレウス菌 13
7位 保育所 19 動物性自然毒 8
8位 その他 8 化学物質 8
最新全国食中毒発生状況ランキング
最新6ヶ月間/2008年3月31日までのデータを登録済
出典/スマイルアップ

ところで万一、明日の朝、子どもが「おなかが痛い」と言ったら、まず何を疑うでしょうか。「集団食中毒では?」と、ピンときて適切なアクションを起こせるでしょうか。とくに、給食のない遠方の学校に通っている場合は、周囲の情報もなかなか入りづらく、発覚までに時間がかかるということも。
これは、昨年実際にあった話です(少し設定を変えています)。


 朝、元気に登校した中学生の娘。電車で60分ほどかかる学校に通学しています。
母親の職場に、お昼ごろ突然、学校の先生から電話が入ったそうです。
「お嬢さんが40度近い熱を出しています。すぐに迎えに来てください!」
切迫した声だったようですが、彼女がとっさに思ったのは、
「夕方まで忙しいのに、待っててくれないかしら?」ということ。
しかし、保健室の先生は「すぐに!! 来てください」と強い態度です。
しかたなく、移動可能な身内に車で迎えに行ってもらい、学校の近くの診療所で診断を受けたところ、「食あたりか、風邪からの症状ですかね。ちょっとようすを見ましょう」と、胃腸の薬をもらったそうです。娘さんはその夜も翌朝もかなり辛そうな感じ。
でも、母親は(大事な試験があるのに…もう、ホントに)と、思っていたのだとか。
 ところが、起きてきた上の息子さんが「ボクもお腹が…」と言い始めました。熱はなく軽い下痢の症状が出ただけでしたが、念のため受診させたところ、
「どこかで外食されましたか?」
と、医師から尋ねられて、思い当たったのが、2日前の夜に家族で食事に出かけたこと。
この時には、その医療機関に某外食店で食中毒が発生したという情報が届いていて、同じ症状で受診する患者さんが他にも数人いたのです。
 ここで初めて、集団食中毒の被害を受たことがわかったのです。
また、その後、新聞の報道を自分で見つけて、子どもたちが被害者だったことに「やっと納得できたの」といいます。一緒に食事をした大人たちは何ともなかったのに、症状の酷かった下の子は、全快までに2週間を要したとか。最初の段階でもう少し早く適切な処置を取っていればと後悔したそうです。
ちなみに、外食店からは丁重なお詫びがあり、1回の受診につき2万円の医療費補償と、後日さらに30万円(4人家族で)が届けられました。
 ニュースでは、珍しくもない集団食中毒。しかし、いざわが身・わが家族に降りかかってくると意外にピンとこないものなのですね。
「これからは子どもの体力を疑う前に、集団食中毒の可能性を先に疑ってしまいそうよ」と、彼女(母親)は、笑いながらも真剣な声でした。
人ごとではありません。
これからの季節はもちろんですが、食中毒にもはや旬はなく、身近に起こりうるもの。おかしいと思ったとき、外食をしたおぼえがあるなら、食事をした店に遠慮せずすみやかに届出をすることです。届出が重なると、店側も状況の把握につとめるでしょうし、中毒原因であると確定すれば迅速な対応がしやすいのではないでしょうか。
 上のサイトでは食中毒発生のメカニズムもくわしく解説されています。ぜひご一読を。(文 / 壷田 ヒトミ)