女性にとって、行きつけの美容院を見つけるのはなかなか大変なことです。スキルはもちろん、料金、場所、店の雰囲気やサービス内容など、すべてに満足できる美容院は簡単に見つかりません。
私もそんな“美容院難民”のひとりです。地域情報誌の美容院の広告欄に目を通すと、各店ともさまざまなアピールを展開しています。カットとカラーで割引、パーマがセットでさらに割引とか、髪にも環境にもやさしい薬剤を使っているとか、コンテスト入賞経験のあるスタイリストがいる、などなど……。女性の気持ちをくすぐる言葉があちこちに並んでいますが、冷静に考えてみれば疑問に思えることがたくさんあります。
これだけ割引をしているのであれば、正規料金でサービスを受ける人などほとんどいないはずです。適正料金は、いったいいくらなのでしょうか。髪に化学反応を起こす化学薬品を“髪にも環境にもやさしい”と表現されると、うまくかわされたような気がします。また、コンテスト入賞経験者とそうでない人のスキルの違いは、どの程度のものなのでしょうか。私の経験からいえば、こういった文言はその美容院の価値を表していないことがほとんどです。
広告に並べられた言葉通りのサービスを受けられないこともしばしばありますし、受けたとしてもそれに非常に満足したという事例はまれです。それよりも、スタイリストさんや店員さんの応対によって、その店を気に入るかどうかが決まることがほとんどです。
「細かくカウンセリングしてくれた」とか、「アドバイスしながら私に合ったカットをしてくれた」などの技術的なことはもちろん、「言葉遣いがていねいで、物腰が柔らかかった」とか、「待っている時間も居心地悪くなかった」なども、大きな要素です。最初にその店に行ったときに好印象を抱くことは必要条件ではありますが、応対の良さを見極めるには、それ相応の時間がかかります。
まして、その後も繰り返しその店に通うかどうかの信頼感は、長い時間をかけてスタイリストさんや店員さんとの間に築き上げていくものです。それには、顧客側の努力も必要です。ちょっと気に入らないことがあったという理由ですぐに店を変えるようでは、行きつけの美容院など永遠に見つからないでしょう。
先日、ここしばらく通っている美容院に行きました。前回行ったときから2カ月以上が経過していました。カットとカラーをお願いして、満足のいく仕上がりになりました。ポイントがたまったということでスタイリング剤をもらい、ウキウキ気分で帰宅しました。
ポストの郵便物を取って家に入ると、まずは鏡で髪形をチェック。もう一度仕上がりに満足をした後でリビングに行き、郵便物に目を通すと、今行ってきたばかりの美容院からのハガキがありました。見てみると、「ご無沙汰しております。今日から2週間の間にこのハガキをご持参いただければ、カットとカラーで3,000円値引きいたします。」というもの。とっさに「損しちゃったよ〜」という感情が込み上げました。
よく考えてみれば、通常料金で満足のいく仕上がりを得たわけですから、別に損をしたわけではありません。それでも、このハガキを出したことはお店側で把握しているはずですから、ハガキがなくても割引料金を適用してくれるのが、心の通ったサービスではないかと思ったのです。しかも、もらってきたスタイリング剤に「ウエーブ用」の文字を見つけ、さらにガックリ。私の髪はストレートなのです。
次回この店に行くかどうか、まだ分かりません。この“事件”のあった直後は、また別のお店を探さなければと思っていたのですが、時間の経過とともに、もう少しこのお店との関係を温めてみてもいいかなという思いがわいてきています。
もっとキレイになりたい願望が強い女性と、気まぐれな女性客をつなぎとめておくために必死の美容院との駆け引きは、永遠に続くのかもしれません。(文/清水純子)
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