平成18年に発表された「家庭教育に関する国際比較調査」(独立行政法人 国立女性教育会館)は、日本、韓国、タイ、アメリカ、フランス、スウェーデンの6か国で、12歳までの子供を持つ各国の約1000人を対象に行われた、父母の育児との関わりを示した興味深いレポートです。
調査結果によると「日本の父親が平日子供と過ごす時間は3.1時間。韓国の2.8時間に比べれば長いが、タイの5.9時間、スウェーデン・アメリカの 4.6時間に比べると短い」といいます。さらに、
(1)日本の父親は、食事の世話、しつけ、保護者会への参加などについては母親まかせの傾向がみられた
(2)日本の父親は、労働時間が長く、通勤時間は6か国中最長である
(3)日本の父親の約4割は「子供と接する時間が短い」ことを悩んでいる、等の現状から「仕事に時間をとられ、子育てしたくてもできない父親の状況が浮き彫りにされています。
一方、日本の母親が子供と過ごす時間は、7.6時間で、6か国中最長。日本では、母親が子育てに担う役割が過重になっているのが現状といえるのではないでしょうか。


さて、平成18年8月29日の日本経済新聞夕刊に、山極寿一京都大学教授が「少子社会の由来」と題するコラムを寄せていましたが、こちらもきわめて興味深い内容でした。山極氏によると、人間に近い類人猿はみな少子であり、ゴリラは4年、チンパンジーは5年、オランウータンは6年に1度、1匹しか子供を産まないとのこと。そして、母親が単独で子育てをするオランウータンが最も出産間隔が長く、父親が子育てするゴリラが最も短い。そして、「メスが血縁者のいない新しい環境で、子育ての協力者を見つけるほうが子供をたくさん産む傾向がある」というのです。
山極教授は続けます。「おそらく人間は家族とそれを支える地域社会をつくったことで多産になった。今それが崩壊し、母親が単独で子育てをするようになったことが少子を招いているのである」。
山極教授のお話は、少子化対策を考える上で参考になります。バリアフリー促進などハードを整備したり、養育費補助や医療費の無料化など経済的援助ももちろん重要ですが、それだけでは、これまでのところ少子化に歯止めはかかっていません。私たちもゴリラに習い、まず父親が子育てに参加できるような社会を目指す必要があるのではないでしょうか。
「父親を家庭に帰そう!」