「教育に問題あり」と叫ばれて久しく、「親学」などという言葉も、マスコミでたびたび見かけるようになりました。教育再生会議、親学提言、そしてその見送りと、話題になることは多くとも、具体的な中身についての情報は不足しがちです。
「親学とはなにか?」という疑問については、いまのところいたずらに大きな波紋を呼びかねないので、ひとまず置いておくことにして、似た言葉ではありますが、まったくちがう概念の、「ペアレントトレーニング」をご紹介したいと思います。
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『読んで学べるADHDのペアレントトレーニング』(明石書店)
この本には、 タイミングをはかって上手に子どもをほめることと、逆に問題行動には「無視」で対応し、それらを通じて、子どもの行動をより望ましいものに変えていく技法が、行動分析学をベースに書かれています。
タイトルにはADHD(注意欠陥多動性障害)という 言葉が使われていますが、 すべての子の子育てや、教育現場にもとても役立つ内容です。
技法はすべて、UCLA精神神経医学研究所のペアレントトレーニング(親訓練)研究と臨床実践から生み出されたもので、エビデンス(科学的根拠)が確立されています。
全体の内容は、日本人の感覚には少しドライに感じるかもしれませんが、もちろん、親の愛情が前提での技法なのは、言うまでもありません。
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友人のすすめでこの本を読んだころ、わたしは育児について大きな迷いがありました。それは…
 


夫をはじめとした何人かに、「もっと叱れ!」と言われていたことでした。
子どもが発達の途中で、大人から見て問題のある行動をするのは、ごく普通のこと。
そして親の役目として、子どもに、していいこと・いけないことの基準を示すのも、また当たり前のことです。
問題はその方法として、「いけないことをしたら、即座に叱りつける」というのがベストなのかどうか、ということ。
これは、子犬や子猫のしつけによく使う方法で、たしかに有効性があると考えます。
子犬や、子猫には。
しかし、人間の子どもも同じなのか?というと、個人的には、必ずしもそうでない、と感じていたのです。
この疑問もまた簡単に結論の出るものではないのですが、少なくとも、ここでご紹介したい「ペアレントトレーニング」では、別の方法が提示されています。
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「育児は育自」というのもまた、使い古された言葉ですが、親は誰しも、迷い、考えながら毎日を過ごしていると思います。
「トレーニング(親訓練)」という言葉に、
「むずかしそう」
「毎日のことで手一杯」
などと反応される方が多かろうとも、想像します。
ですから「すべての親にトレーニングを」などと主張する気も、さらさらないのです。
ただ、わたし個人の体験だと、「ペアレントトレーニング」の概念を知ることで、育児がとてもラクになりました。
息子がラクになったかどうかは、幼い子ゆえ判断できませんが、
「子どもはとにかく怒鳴りつけろ」だった夫を、ある程度説き伏せることができるようになったのは、彼にとって、多分よかったのではないかと…。
育児は毎日が変化の連続。
ひとつ乗り越えたと思っても、また新しい課題が出てきます。
そんなとき、この本を読み返し、トレーニングの反復をしては、課題に挑戦するやる気をもらっています。