消費社会についてコンパクトにまとめられた本をあまり見かけた事がなかったので、企業と消費者のパイプ役としての立場からも興味があり読んでみました。
この本は、30年にわたって消費社会の研究に携わってきたという著者が、戦後の日本の消費社会の変遷と日本人の価値観の変わりようを、著者自身の個人史と重ねて書いたものです。

著者は、二十世紀前半の東京、大阪などの大都市で少数の中流階級が消費を楽しんだ時代を「第一の消費社会」、敗戦、復興、高度成長期の大量生産、大量消費からオイルショックまでを「第二の消費社会」、オイルショック後から低成長、バブル、金融破綻などを含む30年間を「第三の消費社会」、そして、この本のテーマである現在を「第四の消費社会」と、段階的に定義づけています。


そして、それぞれの消費社会の特徴を、マーケティング雑誌の編集経験もあるという著者が幅広い視点で分析し、消費社会が転換していく中での日本人の意識が、国家重視→家族・会社重視→個人重視→社会重視へと変わってきていると論じています。
本書の中で、消費者問題については特に触れていませんが、高度成長期の大量生産、大量消費の社会では、公害や食品の安全に関する問題など、消費者にとって不利益な問題が多数発生しました。そして、サラ金、多重債務、一人暮らしの高齢者や若者を狙った悪質商法等が社会問題化し、更に今日では、インターネットの普及に伴いネット関連の取引、サービスが増加し、国境を越えた消費者問題も起こっています。
このように、段階的に消費社会の特徴・日本人の意識の変化を把握する事で、それぞれの時代に発生した主な消費者問題が浮かび上がり、頭の中で何となく整理整頓ができたように思います。著者自身の個人史も重ねて書かれているので、その当時の日本の様子が垣間見られ、最後まで堅苦しくならずに読み終えました。
本書のテーマである「第四の消費社会」の特徴は、物を私有せずにシェアする方向へ移行しつつあること、消費を通じて人と人とのつながりが重視されること、シンプル志向、日本志向、地方志向などが挙げられています。
少しでも良い消費社会にしていくために、企業と消費者のパイプ役としての役割を自分なりに果たして行きたいと、あらためて思いました。