ゴールデンウィークに久しぶりに帰省して、実家のテレビのリモコンを見てびっくりしました。音量ともう1つのボタンが赤くマーキングされていて、「赤以外はさわらないこと」と書いてあるのです。テレビの電源を切るときはリモコンではなく、本体の電源ボタンを押すようにと、子ども達にも念押しされてしまいました。
一体実家のテレビに何が起こったのだと思いますか?
私の実家は後期高齢者である両親の二人暮し。
最新のデジタル機器からは縁遠い生活をしています。両親にとって、リアルタイムの情報源はテレビのみ。ですから、テレビ放送が2011年に地デジに切り替わるのは大問題でした。そこで両親は昨年ケーブルテレビに加入して、これで安心してテレビが楽しめる、映像もきれいになって、ついでにチャンネル数も増えてよかったよかったと喜んでいました。
しかし、ここに大きな問題が。テレビのリモコン、ビデオのリモコン、ケーブルテレビのリモコンと3種類のリモコンがテレビの前に登場してしまったのです。
ビデオの利用は早々にあきらめてしまったようですが、テレビのチャンネル操作ですら、うまくいかなくなってしまいました。
原因は多機能なケーブルテレビのリモコンのせい。実はこのリモコンは1つでテレビの操作も、ケーブルテレビチューナーの操作も行える便利なものだったのですが、そのかわり利用したい機器ごとに切り替えを行う必要があったのです。
だいたい、どこからどこまでがテレビの機能で、どこからどこまでがケーブルテレビの機能かなんて、高齢の両親にわかるわけもありません。
使いたい機能が使えなくてリモコンをいじっているうちに、全く元に戻らなくなってしまった… ということが昨年来数回起こり、そのたびにケーブルテレビ会社の人に来てもらうはめになったそうです。
もちろん、当初は無料だったのですが、契約後半年以降は有料対応になるというのです。困った両親はケーブルテレビ会社の人と相談して、利用するチャンネルをアナログテレビと同じものに限定してリモコンの1ボタンに登録し、音量とそれ以外は触らないことにしました。うっかりケーブルテレビチューナーの電源を切ってしまうと、またわからなくなってしまうので、テレビを見ないときはテレビ本体の電源を消すというルールにしたそうです。
携帯電話は、高齢者向けのシンプルでわかりやすいものが続々と発売され、人気のようです。しかし、携帯電話以上に高齢者が利用するテレビは、地デジスタートや薄型テレビ、ハイビジョンレコーダーとの接続など、多機能、高機能を競う一方で「高齢者向け」という話はあまり耳にしません。今の高齢者の人たちが昔から親しんできたテレビのような機器こそ、高齢者向けのものを開発してほしいものだと思います。
せめて、リモコンだけでも「らくらくホン」のような高齢者にわかりやすいものが選べるようになっていればいいのではないでしょうか。
本当は24時間天気予報やケーブルテレビの紀行番組も楽しみたかった両親のことを考えると、今もちょっと心が痛みます。
いえ、そういう私も気がつけば新しく買ったハードディスクレコーダーの操作は息子におまかせなのですが。(文/林なお)