仕事と子育ての両立を支援するため、今や国をあげて様々な制度が整えられつつあります。育児休業取得率は9割となったそうですが、出産・育児を機に退職する女性は6割強もおり、この状況は20年前とあまり変わっていないのだそうです。
大企業では、一時金の支給やフレックス勤務、企業内託児所等の多彩なメニューを用意して両立支援をする会社も多くなっています
しかし中小零細企業の中には「うちには関係ない」と思っているところも多いのが実情です。育児休業は企業の規模にかかわらず「育児・介護休業法」に定められた労働者の権利なのですが、残念なことになかなか周知されません。
そんな中「仕事も子供もあきらめない」そんなキーワードがピッタリの、しなやかでたくましい女性のことをご紹介したいと思います。
Mさんとは市の母親学級で知り合いました。ほとんどのママが専業主婦だった中、彼女は育児休業中、しかも従業員30名ほどのベンチャー企業で初の育児休業取得者でした。よっぽど理解のある社長なのかと思いきや、人事制度については全く興味のない社長だったそうです。撤退した外資系企業の後を引き継いだベンチャー企業だったため、従業員は男女とも皆夜中まで働くバリバリタイプばかり。女性の中でも結婚しているのはMさん含め数人のみで後は独身のキャリアウーマンたちでした。
そんなとき妊娠したMさん、最初に相談したのは大企業出身の直属の上司でした。彼女の仕事ぶりを評価してくれ、理解ある男性だったそうです。その上司に相談したところ、「この会社は小さくて法律や制度のことは誰もわからないし、調べているヒマもない。自分がどうしたいのか、法律はどうなっているのか調べてレポートにしてきなさい。そして社長に相談しよう」と言ってくれたそうです。
Mさんのレポートはどんな内容だったと思いますか?
彼女は法律や制度はもちろん、出産予定日や復帰予定など自分のスケジュールそして休業中でもできることを一覧にしました。私がすごい!と思ったのはそのレポートの中に、育児休業取得者が初めて出た会社に国から助成金が出るという情報まで盛り込んだのです。
いくら法律で定められている制度とはいえ、育児休業者が出れば一時的に業務の流れに支障が出ます。Mさんは一方的に自分の権利を主張するだけでなく、会社が不安を抱かないように先の見通しと会社にとって利益になる助成金情報まで提示してWIN&WINになるための「交渉」をしたのです。
子供は計画どおり4月生まれでほぼ1年の育児休業をとったMさん、0歳11か月で保育園に入れ復帰しましたが、1年間勤務してまた妊娠。次の子供も4月生まれで、またまたしっかり1年間育児休業をとったのでした(笑)。
数年後、夫の転勤と独り暮らしの父親の介護で長野県に引っ越した、という手紙をもらいました。さすがに退職したのかと思ったら、なんと!驚きの答えは、
「週1回新幹線通勤で東京に行くの、他の日は在宅勤務よ」
たくましさとしたたかさに脱帽しました。
でもこれだけ会社に必要とされる女性になりたいものですね。