「すみません、このお料理にお肉が入ってますか?」

外食の際、お店で私がいつも聞いている質問です。

アレルギー体質というわけではなく、文化的なある事情があって、
私も私の家族も、お肉、そしてその加工品を口にすることができません。

スーパーなどで買い物をする際は、原材料・成分表示も改善され、
かなり細かい部分まで書き込まれているので、食べられるものがすぐ分かるようになりました。

しかし、外食のメニューについていえば、まだ充分とはいえず、
例えばそれが「シーフードグラタン」であっても、時折ベーコンなどの加工品、
そしてラードが入っていたりするので、確認を怠ることができないのです。

さて、外食先で「お肉が入っていますか?」と何年も聞き続けてきて、
お店や人によって、その時の対応が、ずいぶんと違うことも身にしみてわかってきました。

一番ありがたかったのは、
「聞いてまいりますので、少々お待ちください」とすぐ厨房に回り、
お肉が使用されていないメニューを、すべてしっかり調べてきてくれたこと。
さらには、注文しようと思っていたメニューが、
実はトンカツと一緒に揚げられていることも伝えてくれたこと。
ひとつの質問で、ここまで配慮して回答してくれたのは、このお店が初めてでした。

また、一番多い反応は、
「入っていないと思います」と自分の判断で答え、
正確な情報を伝えてくれないパターンです。

メニューやその原材料をしっかり把握しているのであれば、
「入っていません、大丈夫ですよ」という回答になるのですが、
「思います」がつくのは、あきらかに自己判断。

以前、その自己判断を信じて、注文したお料理を口にできなかった経験があるので、
その場合は「すみませんが、厨房で聞いてきてもらえませんか?」と促し、
しっかりと確認をとってもらいます。

最悪だったのは、「聞いてきてもらえますか?」と促しても、断固としてその場を動かず、
「ですから、入っていないと思いますから、大丈夫です」と言い切った人がいたこと。
「忙しいんだから、そんなことしていられない」という気持ちが、
その人の顔にしっかりと出ていました。

 

私たちは、アレルギーでお肉を口にしないわけではないので、
仮に間違って口にしてしまっても、健康や命に関わる症状が出たりはしません。
けれど、“もしアレルギー体質の方が、問題のある食品を口にしてしまったら?”
と考えれば、ウェイターさんも、ウェイトレスさんも、決して自己判断では答えないはずです。

聞いてきてほしい理由を何度か告げて、やっと厨房に回ってくれたとき、
そのレストランで食事をする気持ちがすっかり失せていました。

世の中には、アレルギー体質であったり、
私たちのように文化的な事情で口にできないものがあったりと、
様々な事情を持った消費者がいます。

最初から考慮してメニューを作れ、対応しろ・・・というのは難しい話でしょうが、
消費者のニーズにあわせて、誠意をもって対応していただけるといいなと思わざるを得ません。

※ところで余談ですが、非常に有名な某テーマパークに、
文化的な事情を考慮したメニューが少ないことに、愕然としたことがあります。
レストランや売店はいろいろあるのに、食べられるメニューが見つからず、
広いパークの中を、右往左往してしまいました。

日本ではまだ考慮しにくいものでしょうが、
それが海外からのお客さまも訪れる観光地の場合には、
「文化的な事情」を配慮したサービスは、必須なのではないかなと思います。(文/稲村えり子)