男性の育児休業取得率は4.9%――東京都の「平成18年度男女雇用平等参画状況調査」の結果を見ると、男性の育児休業取得への道は険しいとつくづく実感します。一方で女性の取得率は92.3%と高く、働く女性が、出産を経て同じ職場に復帰できる制度がようやく「普通のこと」として定着してきた様子が伺えます。
では、なぜ男性になると育児休業の取得率が低くなるのでしょうか。もしかしたら男性は育児休業を取りたくないと考えているのかもしれません。しかし、同調査で育児休業取得の希望について聞いたところ、男性でも68.9%が「取りたい」と答えています。ただし、取りたい期間は、女性に比べて控え目でした。
「取りたい」と答えた男女に取りたい期間を聞いたところ、女性が「1年」(28.2%)、「1年6ヶ月以上3年未満」(25.0%)が多かったのに対して、男性は「1ヶ月未満」(29.1%)、「1ヶ月以上3ヶ月未満」(13.2%)が回答の多くを占めました。女性の場合はごく自然に、「赤ちゃんが1歳を超えるまで休みたい」と考えているようですが、男性の場合は「会社から許可されるのは1〜3ヶ月くらいが限度」と計算している様子が浮き彫りになっていました。
 


どうやら短い期間なら男性も育児休業を取りたい、と考えているようです。では、会社側は男性の育休についてどう考えているのでしょうか。同調査の自由意見欄をみてみますと、会社側(人事労務担当者)の本音が透けて見えます。「就業規則上は育児休業について男女の差はないが、女性のみが取得できる休暇と考えている社員が多い」(金融・保険業:従業員数100〜299人)、「中小企業は経営環境が厳しく理想と現実が一致しない。育児休業の取得者が出ると復職するまでカバーするのが大変」(卸売・小売業:1〜99人)など。前者は、そもそも男性社員が育児休業を取れると考えていないだろう、というある意味で想像力が欠如している回答。後者は、人員に余裕がないので希望されたら大変だという回答でした。このような会社側の意識は、残念ながら多数派なのだと思います。
私の場合は約半年間、育児休業を取ったのですが、申請した後に上司に呼ばれ、「将来、配置転換で不利になるぞ」「男が子育てしてどうするんだ」などと言われました。その上司とは信頼関係があり、心配してくれていたのがわかったので、「自分としては(第2子で育休をとる)最後のチャンス。思い切ってお願いしました」と説明し、最後には、「まあ、がんばれ」と送り出してもらいました。けれども、世の中のすべての上司が理解してくれるとは私も考えていません。何かと応援してくれた同僚でさえ、ふとした拍子に「出世はあきらめたんだね」などと言い出し、私を苦笑させてくれました。
調査に回答した従業員も、企業および人事のシビアな見方については十分承知しているようです。従業員の自由意見には、「育児休業等の制度は実際にあっても使用できない。会社には代わりの人材を配置する余裕もないし、自分一人だけでは休暇をとりづらい」(30歳代・男性)、「とりづらいのが実情だ。妻の出産時に1日半の休暇を取得したが、後ろめたい気持ちがあった」(30歳代・男性)などの声が圧倒的に多く見られました。
この後ろめたい気持ちは、私にも少しありました。私が育児休業を取ることによって、配置転換や担当する仕事が変わるなどの影響がでることが予想できたからです。しかし、それは仕方のないこと。今回は私だったけれど、次回は君、という風にお互い様の精神でいけばよいと考えました。
男性が育児休業を取ることについては、まだまだ社内に大きな壁が存在するのが現実です。ですが、少なくても30年前には考えられなかったテーマが今、あちこちのメディアで取り上げられているのを見ると、今後は少しづつ会社も変わっていくのでは、と期待して今回のレポートのまとめとさせていただきたいと思います。