『13歳のハローワーク』村上龍
この本が出版されたとき、「なぜ今まで大人は、職業についてもっと教えてくれなかったのだろう」と子供への職業教育の必要性に、とても共感しました。
私は社会に出るまで、あまりにも職業に対しての知識を持っていませんでした。つまり、無知な状態で大学(学問)を選び、漠然と”OL”になるために就職活動を行いました。
職業の選択次第で人生がどれほどの影響を受けるのか、深く追求することもせず、節操なくあらゆるネームバリューのある企業を訪問しました。就職活動の中でようやく自分の興味、自分の将来が見えてきましたが、すでに選択肢はとても狭い物でした。社会の実態を把握できたのは社会人になって3年以上経ってのことです。そして、10年も経つと自分の生き方や、好きなことを職業にすることの意義などについて、悩み、焦るようになりました。
育児休業を終え復職を考える今、さらにその自問は大きくなるばかりです。


この一年、とても活き活きと仕事をしている女性に多く出会いました。ベビーマッサージの講師や、ヨガ・水泳の講師など、晴れやかに心と体を動かしている方たち。助産師、産婦人科医、保健師など、生命の誕生に携わり、年を重ねるほどに信頼を得る職業の方たち。なんと素晴らしい仕事だろうと感動し、そのような仕事を選んだ女性達がとても羨ましく、そして輝いて美しく見えました。
安易にOLの道を選んだ自分がとても狭い窮屈な場所にいるように思えてなりませんでした。
もちろん自分の将来に夢を描くのに、遅すぎるという言葉はないと思います。助産師さんにお話を伺ったところ、やはり出産を経験して助産師に憧れ、その後、勉強を始めて助産師になる人も多いそうです。今から何か新しいことを始めれば、50、60歳の時には職歴20、30年のベテランになれるわけですから、どう生きるかは自分の決意次第です。
話は戻りますが、この『13歳のハローワーク』、現在は書籍からWEBサイトへと進化し、より多くの最新情報を得られるようになりました。
『13歳のハローワーク公式サイト』
実際にその仕事に就いている大人に、子ども達が質問できるという機能もあります。
今、キッザニアという職業体験テーマパークが話題になっていますが、子供達に伝えたいことは同じだと思います。社会のルールや仕組みを学ぶことは本質ではなく、社会への探求心を養うということに大きな意味があるのではないでしょうか。社会とは何なのかという問いを抱きながら、世の中を見聞し、大人になってほしいと思うのです。
著者である村上氏も、『好きなことを「探しましょう」ではなくて、「自分は何が好きか」を頭の片隅に置いて、好奇心を失わず、日々を生きることができるようになってほしい』とおっしゃっています。
私も親として、子供には自立して活き活きと生きてほしいと願っています。好奇心がどんな世界につながっていくのか、日々の生活の中で共に考え、見守っていきたいと思います。