昨今、社会保険庁のずさんさが報道されたり、自宅にねんきん特別便が届いたりと年金のことを考える機会が増えました。「年金」というとどうしても歳をとってから受け取るものと考えがちですが、年金には3つの給付があることをご存知ですか?
老齢年金」定年後など一定の年齢になってから受け取る年金です。歳をとって働けなくなり収入を得られなくなるリスクに対応しています。
遺族年金」一家の大黒柱に万が一のことがあった場合、残された家族に支給されます。働き手の死亡により収入が得られなくなるリスクに対応しています。
障害年金」病気やケガなどで一定の基準の障害の状態になった場合、支給されます。障害が原因で働けなくなり、収入が得られなくなるリスクに対応しています。
このうち、障害年金は残念ながらあまり知られていません。寝たきり等の重度な障害や産まれつきの障害がある人が対象と思っている方が多いようなのです。では、障害年金はどのような時支給されるのでしょうか? 次のクイズを見てください。AさんからFさんのうち、障害年金を受け取れる可能性があるのはどの人だと思いますか?

Aさん: 交通事故で半身不随になり、車いすの生活
Bさん: 糖尿病で目が見えにくくなり、視力は右目0.01左目0.07
Cさん: 腎臓が悪くなり、週2回人工透析に通っている
Dさん: 不整脈が見つかり、心臓ペースメーカーを入れている
Eさん: リウマチで右足と右腕がこわばり、歩くのも家事も困難で介助してもらっている
Fさん: 過重労働でうつ病を発症。再就職の意欲もわかずに家にこもっている。


答えは、「全員受け取れる可能性がある」です。
 障害年金には障害基礎年金と障害厚生(共済)年金があります。基礎年金は国民年金のことで、自営業者や主婦、学生、無職の方が加入する年金制度です。厚生年金は民間のサラリーマン、共済年金は公務員や学校の先生などが加入する制度です。
 障害基礎年金には1級と2級、障害厚生(共済)年金には1級2級3級と障害手当金という一時金があります。等級はいずれも障害の程度を表すレベルのことで、

1級= 日常生活において常に他人の介助を受けなければならない状態
2級= 日常生活においてかならずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活が極めて困難で労働によって収入を得ることは難しい状態
3級= 労働をするには著しい制限を受ける状態

を表しています。これを見ていただくと、AさんからFさんまでの方は1〜3級のどれかに該当しそうですよね?
障害年金を受けるためにはあと2つ重要な条件があります。
ひとつは過去に滞納が一定以上ないこと。
ふたつめは加入中に事故や病気の初診日があること。
障害厚生(共済)年金を受けるためには、在職中に初診日があることが必要です。年度末に定年を迎える予定の方や退職予定の方は、念のため在職中に病院にかかっておくことをお勧めします。
厚生年金や共済年金の方は保険料は給与から天引きされますから保険料滞納ということはまずありません。しかし国民年金の方は、うっかり滞納しているといざという時に障害基礎年金を受けられなくなってしまいます。100年に一度の不景気で保険料が納められないという方は、保険料の免除申請をしてください。「滞納」と「免除」では、保険料を納めないということは同じでも結果には大きな違いがあるのです。
複雑でわかりにくい年金制度ですが、せっかく納めている保険料ですからキチンと知って損のないようにしたいですね。